子どもの居場所は地域の中に〜みんなおいでよ!フリー塾〜
岡山市子どもセンターの活動
広がる子どもの居場所
夏休みフリー塾においては実施会場の選定は非常に重要です。小学生が自分自身で参加の意思決定ができるよう
小学校区ごとに実施することを目標としてきました。さらに日常的な子どもの居場所作りにつなげていける場所であることも考慮し、
会場を選定しました。
地域住民の生涯学習の場であり、
地域ネットワークの要である公民館を中心に小学校、中学校、コミュニティハウス等を会場にしてきました。
5年間では公民館(分館も含む)35ヶ所、小学校31ヶ所、中学校3ヵ所、集会所他18ヵ所の計87ヶ所、旧岡山市内の80%の小学校区まで実施会場を
広げていくことができました。一つの小学校区内で複数の会場で実施できるところも増えてきましたが、
5年間一度も実施できていない小学校区がまだ21もあります。
夏休みフリー塾は、地域の人を中心とした地域実行委員会が実施してきましたが、
地域実行委員会が作れないところは、岡山市子どもセンターが直接的に実施する形態をとりました。
夏休みフリー塾が実施できるかどうかは、
地域実行委員会が作れるかどうかに大きく左右されます。
岡山市子どもセンターによる直接的な実施を増やしていくのではなく、
地域実行委員会を増やし地域住民による子どもの居場所作りをすすめていきたいと思います。
また、実施会場を広げていくことと共に、子どもの日常的な居場所作りをするためには継続していくことも重要です。
5年間のうち5回実施33ヶ所、4回実施4ヶ所、3回実施10ヶ所、2回実施10ヶ所、1回実施30ヶ所です。
継続することで夏休みフリー塾を通した地域の大人のつながりが生まれてきます。また顔見知りも増えてきます。
大人同士、子ども同士、そして大人と子どもがつながっていくことが、子どもの居場所作りの基礎となるでしょう。
小学生のときは参加者として、中学生になったらボランティアスタッフとして参加してくれる子どもも増えてきました。
5年間継続した33会場のうちの73%にあたる24会場が公民館です。
子どもの居場所がある街づくりをしたいという市民と公民館による協働の成果です。
また一年間のみの実施30会場のうち60%にあたる18会場が小学校です。
少しでも子どもが自分の意思で参加決定ができるよう会場選定に工夫した結果です。
広げていくことと継続していくことの両面から子どもの居場所作りをすすめていくことが今後の課題です。
楽しい実体験をしよう
子どもの日常生活においてはテレビやインターネットなどから得られる情報量は飛躍的に増加していますが、
実体験はどんどん減っているのが現状です。自分の頭で考え自分の手を使い自分の五感に働きかけながら、
みんなで何かをやり遂げる体験の積み重ねなくしては、人として育つことが難しいといっても過言ではありません。
夏休みフリー塾の講座では途中の過程においても、またできあがった結果においても各人がそれぞれの創造性を発揮できることを大切にしました。
工作や料理などの講座では、使ったことのない道具にも挑戦しました。
友だちやスタッフの人とワイワイにぎやかにおしゃべりしながらするのも夏休みフリー塾ならではの楽しい光景です。
また、子どもたちは暑くても身体を動かすことが大好きで軽スポーツやダンスなども数多く実施しました。
岡山市子どもセンターで、毎年「みんなであそぼう!科学の世界」を実施し多くの科学遊びが蓄積されていたこともあり、
様々な科学遊びがとり入れられました。身近なものを使った科学遊びは子どもたちに発見や驚き、感動を与え、各地に様々な形で広がっていきました。
公民館との協働がすすんだことで公民館の講座と連携したパソコン・囲碁・将棋・絵てがみ・国際交流、地域名人さんによる茶道・華道・昔あそび等も
年を追って増えてきました。
野外で行う水辺教室・セミの羽化観察・川下りや宿泊を伴うお泊まり公民館、国体関連の講座なども実施しました。
自分のやりたい宿題を持ち寄る「宿題をしよう」の講座も毎年増えています。
地域実行委員が集まって全体会を行うことで講座内容についても交流がすすみ、毎年200以上の講座が実施できるようになりました。
子どもに何を体験させたいのかをきちんと確認しながら、さらに新しい楽しい講座をつくり出したいと思います。
地域の人と一緒に
この夏休みフリー塾では、体験活動を通して子どもたちが生きる力を育んでいくと同時に地域のいろいろな人とコミュニケーションすること、
その楽しさを実感してもらうことを大切にしました。ですから、地域ボランティアスタッフはとても重要な位置づけでした。
公民館の持っている人材ネットワークを紹介してもらったり、参加する子どもの保護者に声をかけるなどして
地域に住んでいる様々な年齢や職業の方にお願いしました。快くボランティアスタッフとして参加してくださる方が増えてきています。
平均すると参加者3〜4人にスタッフ1人という割合の中、参加者とスタッフがコミュニケーションをとりながら
ゆとりのある夏休みフリー塾を実施することができました。
また、中学生ボランティアスタッフを夏休みフリー塾を作っていく大切なパートナーと位置付けて継続して募集してきました。
その結果、2005年度には500人を超える中学生が活躍しました。同じ地域に住んでいても日頃はあまり交流のない中学生ですが、
小学生にとっては優しいお兄さんお姉さんとして絶大な人気があります。また、中学生にとっても頼られ慕われることで
地域の中で社会的な役割を果たす場になりました。高校生も年々増えてきました。夏休みフリー塾がいろいろな年代の人たちが集う地域の居場所の
ひとつになりました。
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夏休みは子どもにとって本当に楽しみな時間であり、また心や体の成長にとってかけがえのない大切な時間です。
そんな夏休みに子どもたちが生活している身近な場所で、楽しみながら生きる力を育んでいけるような体験活動の場を作りたい。
そして地域に住んでいる人たちによってその場を作り出すことができたら、地域のコミュニティ作りにつながっていくのではないだろうか。
そんな思いで始めた夏休みフリー塾も、5年がたちました。この5年間で総参加者は38,000人を超えます。
本当に多くの人が参加者としてまたボランティアスタッフとして夏休みフリー塾に集ったのです。
そこには楽しそうで生き生きとした子どもやおとなの姿がありました。
社会の後押しもあり、行政、市民の方そして子どもたちとの協働により「実体験活動の推進」「子どもの居場所作り」「中学生の社会参画」
「地域による子育て支援」等に一定の役割を果たすことができました。
そして今再び「子どもが豊かに育つ地域のあり方」に社会の関心が向けられ様々な知恵が集められています。
子どもが生まれながらに持っている生きる力を子ども自身で育てていけるような地域作り、そして誰もが「住んでいてよかった」
「ここで子育てをしたい」と思えるそんな居場所のある街づくりをしていきたいと思います。
「子どもの居場所は地域の中に
みんなおいでよ!フリー塾」